石川県能登地方で発生した地震で大きな被害が出ています。避難先で、特に支援が必要になるのが妊産婦や乳幼児です。災害時の母子支援に詳しい、神奈川県立保健福祉大教授で産婦人科医の吉田穂波さんに聞きました。
――災害の時、妊産婦や乳幼児はどんなリスクがありますか。
避難生活では、ストレスや衛生環境の悪化によって、妊産婦や乳幼児は様々な影響を受けます。
妊婦さんは避難所生活による疲労の蓄積や、睡眠や栄養、水分の不足により、血圧の上昇、むくみ、静脈血栓症、さらには切迫早産のリスクが高まります。
できる限り寒さを避け、こまめに水分をとり、十分に足を伸ばして横になれる場所を確保してほしいです。
乳幼児は集団生活の中で感染症にかかりやすかったり、不安行動を起こしたりします。
赤ちゃんがえりや夜泣き、乱暴な言動などは、非常時における「正常な行動」です。大きく受け止め、しっかりと抱きしめてあげてください。
一方で子どもを励まそうと頑張るあまり、大人も自分の気持ちを押し込めてしまいがちです。信頼できる人と話をする機会を持ちましょう。
――乳幼児を連れて避難する際に役立つものは何でしょうか。
命を守るための一次避難と、一時帰宅の安全が確認できてからの二次避難で、持ち出すものを分けて考えましょう。
母子健康手帳は常に持ち歩きましょう。だっこひもは両手が使えるので避難の際や避難生活で便利です。
紙コップは、哺乳瓶が洗えないときの授乳に役立ちます。市販の離乳食の備えがあると安心ですが、母乳やミルクで代用したり、大人の食事を取り分けたりして対応することもできます。
オムツは、避難所によっては合うサイズがない場合もあり、確認が必要です。
余裕があれば、使い慣れたおもちゃなどを持ち出せると心のケアにもつながります。
避難所で困ったら「助けて」と言っていい
――妊婦や子どもがいる家庭は、避難所では少数派かもしれません。
東日本大震災の被災地などで、新生児訪問などの支援活動をしてきましたが、災害時、避難先で助けが必要になっても「命が助かったのだから」と我慢を続けてしまう親子を見てきました。
誰もが大変な状況ではありますが、妊産婦や乳幼児は特に守られる対象であること、「助けて」と言っていいんだということを知ってほしいと思います。
残念ですが、災害がひとたび起こると、できることは限られてしまいます。特に発災直後は行政も混乱します。
いま安全な場所にいる人も、災害時の備蓄といったハード面の備えや、いざというときの家族の集合場所や連絡先の確認といったソフト面の備えについて、考えてみてほしいと思います。
詳しくは「あかちゃんとママを守る防災ノート」(https://www.bousai.go.jp/kaigirep/kentokai/hinanzyokakuho/wg_situ/pdf/dai3kaisankou4.pdf)にも掲載しています。(聞き手・松本千聖)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル